通学・通勤暇つぶし 小説・物語

隙間時間にでも読んでいただければ幸いです。小説は定期的に更新致します。

通勤・通学・暇つぶしに 焼き鳥の「串から始まる物語」①

その日は熱があり、ひどく体調が悪かった。
朝には宅配便に使った印鑑を、そのまま洗濯機に投げ込んだ。
すぐに気がついて取り出したが、インク内蔵式だったので、そのまま洗っていたらどうなっていたか想像すると恐ろしい。

1人暮らしをしていると、体調が悪くなった時がみじめだ。
普段はそれほど1人でいることを意識することはないのだが、体調不良で寝込んでしまうとたまらなく人が恋しい。
冷たい枕に変えてくれたり、温かいおかゆを作ってくれる人がいれば…とクリスマスイブの夜ぐらい寂しい気持ちになる。

お腹が空いた…。
食欲はあるようだった。冷蔵庫には使い残しの調味料しかなかった。キッチンの引き戸を開けて探してみたが、ストックしてあったカップラーメンしかなく、食べる気にもならなかったので、近くの小さなスーパーまで買出しに行くことにした。
みずみずしい果物がとにかく食べたかった。

ジャージに着替え買出しに向かった。スーパーまでは徒歩で約3分。
朦朧としながら歩を進めていくと、普段見慣れない焼き鳥の屋台があった。

場違いに小さな公園の前を占領し、入り口を見事に塞いでいた。
子供がかわいそうだ。この公園で誰も遊んでるのを見たことはないが。

そのまま通り過ぎようとすると、やきとり屋のおじさんが声をかけてきた。

「おい!そこのあんた!」

無視だ…。やきとりを食べる気分ではない。僕はみずみずしい果物が食べたいんだ。

聞こえないふりをしてそのまま足早に通りすぎようとすると、

「そこのあんた!ひどい顔してるねー。とんでもない悪いことが起きるよ!」

…。この体調の悪い僕に向かって、なんだというのだ。
体調が悪いのだから確かにひどい顔をしているのかもしれないが。

ひどい顔ってのはだいたい侮辱じゃないか?言い返すきっかけを探ろうと思い、

「なんですか?何が悪いことなんですか?」と、鋭い目つきで振り返った。

おやじは僕の視線にたじろぐ様子もなく

「いやねっ。おれはー こう見えて占いやっててさ。ちょっと占ってやるよ」

宗教の勧誘かな…。そういことならとすぐに矛を収め

「すみません。失礼しました。」とすぐに立ち去ろうとした。

「待て待て」と、強引に腕を掴まれ「すぐだから」

おやじはそう言うと、無造作に焼き鳥の串を掴み、竹とんぼのように両手で数秒こねて念を入れると、エエイッと、これまた場違いな大声と共に空高く投げ上げた。

空高く舞い上がった焼き鳥の串は、アスファルトの地面にそれぞれそのままポトリと落ちた。

 

なんて不衛生な店だ…。そもそも公園の入り口を塞いでいる時点でおかしい奴だ。完全に関わらない方がいい。

地面にばら撒かれた串から、ふとオヤジに目を移した。


オヤジは串を見つめ生気の抜けた、血の気の引いた白い顔をし、硬直し震えていた。

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
※当小説は、ブログのみに掲載しております。小説の続きは定期的に更新致します。

 もっと面白い様々な漫画や本があるサイトです。↓よろしければ覗いてみてくださ い。

 

楽天ブックスは品揃え200万点以上!
https://rpx.a8.net/svt/ejp?a8mat=2TC3M5+ELPRXU+2HOM+6VK1F&rakuten=y&a8ejpredirect=http%3A%2F%2Fhb.afl.rakuten.co.jp%2Fhgc%2F0eac8dc2.9a477d4e.0eac8dc3.0aa56a48%2Fa17020577049_2TC3M5_ELPRXU_2HOM_6VK1F%3Fpc%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252F%26m%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252F